
「すべての人に同じように接することが、すべての人に平等に接することと同じではない」ということ。これは、弊社の「Travel Proud」プログラムにある重要な教訓のひとつです。LGBTQ+の旅行者に心から居心地の良い滞在を体験してもらうべく、宿泊施設の皆様は当事者の人々が直面する付加的な課題を理解し、当事者特有のニーズに応えられることを示すために様々な行動をとることができます。
1. 完全なゲストエクスペリエンスを詳細に見直す
LGBTQ+のゲストが貴施設のオンライン掲載情報を目にした瞬間から、チェックアウトしてお帰りになるまで、LGBTQ+のゲストとの間で生まれるすべてのやり取りに思いを巡らせましょう。そして、当事者の立場になって考え、旅行体験全体を振り返ってみてください。また、貴施設のマーケティング資料に検討の余地がないか考えてみましょう。「ママ」、「パパ」、「息子」、「娘」という表現ではなく、「家族」、「親」、「子供」といった性別を特定しない表現を使っていますか?同性カップルが貴施設の写真を見て、そこに自分たちが含まれていると感じることができますか?
チェックインの場面も想像してみましょう。たとえば、スタッフ全員がノンバイナリーの性自認について認識していますか?そして、どの呼称を使って呼んでほしいのかについて共通認識を築くことの重要性を理解していますか?重要なのは、やり取りが生まれるあらゆる場面について検討することです。これを徹底するために、LGBTQ+の当事者の方何名かにフィードバックを求めてみてはいかがでしょうか。
2. ゲストとのやり取りの中で、より思慮深いアクションを
私たちは皆、脳の奥深くに暗黙の偏見がありますが、何か考えが生まれた時はまず注意し、一呼吸おいてみてください。行動に移す前に、共感、好奇心、理解力を働かせて、自分の考えを吟味しましょう。覚えておかねばならないのは、私たちは皆、人間であり、間違いは起こるということです。間違いをしてしまったら謝り、次に活かしましょう。相手に寄り添っていることを示せば、次はもっとうまく対応できるようLGBTQ+のゲストはきっと手助けしてくれるでしょう。
3. ささやかなことができないか考えてみる
無料のシャンパンや高級バスローブを用意すると、ゲストにより一層特別な気分を感じてもらえます。ただし、デフォルトでウェルカムメッセージに「Mr and Mrs」と書いていたり、「男性用」、「女性用」の銘の入った刺繍入りローブを用意してしまえば、まったく逆効果になる恐れがあります。このようなことにならないよう、細部に注意を払うことが非常に重要です。スタッフの名札にスタッフ自身が希望する呼称が使われている、共用エリアのトイレを性別で分けずに誰でも使えるようにする、プライド月間だけでなく通年でLGBTQ+のイベントを宣伝するなど、ささやかながらも連帯感を示す行動が大きな意味を発揮します。
さらに、このようなインクルーシブな行動は、LGBTQ+コミュニティ以外の人々にとってもメリットになります。性別で分けない「だれでもトイレ」は、実用面からいえば、父親と娘や、母親と息子の場合など、追加的な支援を必要とする人とその介助者にとって助かる存在になります。また、社会面からいえば、こうした配慮により多くの人々に親しんでもらうことで、より受容性の高いインクルーシブな世界へと、皆を少しずつ動かすきっかけになります。
4. LGBTQ+に関する知識の泉になる
ホスピタリティ業界は長い間、異性愛のシスジェンダーのゲストへのおもてなしに偏っていました。すべての人に平等におもてなしするという点において、宿泊施設の提供者は、LGBTQ+コミュニティに地元の関連知識を同様に十分に提供すべく、より深く掘り下げていく必要があるかもしれません。弊社の調査によると、37%は自分の好みや興味に合った、よりカスタマイズされたおすすめ情報が欲しいと感じており、31%は現地の法律、宗教感情、ドレスコード、ヘイトクライムの統計情報など、現地のLGBTQ+の受け入れ状況に関する追加情報が欲しいと感じていることが分かりました。
この分野の専門知識を高めるために利用できるリソースは数多くあります。たとえば、IGLTAが様々なタイプの旅行ガイドを発行しているほか、地元のLGBTQ+の人々と話をすれば、現在関心のある事柄をたくさん知ることができます。UNWTOによると、LGBTQ+の旅行市場は成長を続けており、2030年までには1億8,000万人の旅行者が含まれると見込まれるため、この調査結果はこの先必ず重要になってくるでしょう。
5. スタッフを訓練し、その取り組みを発信する
インクルージョンに関するポリシーがまだない場合は、ポリシーを設定することをお勧めします。このようなポリシーは、スタッフやゲストに期待される、従うべき行動規範を提示するものでなければならず、また、性的指向や性自認に基づく差別がもたらす影響を明確に示している必要があります。ポリシーを作成したら、周知のうえ全員に理解が浸透するようにしてください。
また、チームをトレーニングすることも画期的な機会になるでしょう。必要なツールをスタッフに提供し自発的に行動できるようにすることで、もしスタッフが差別的な振る舞いを目撃した場合でも、自信を持ってその状況について声をあげることができるようになります。貴施設のスタッフがLGBTQ+の旅行者についてさらに理解を深め、良質なおもてなしを提供できるよう、Booking.comでは無料の「Proud Hospitality」トレーニングを提供しています。
すべての人に居心地の良い快適な滞在をお届けするために貴施設で取り組んでいる、様々な効果的な手段について意識向上を図ることは、LGBTQ+のゲストに安心感を感じてもらうことだけでなく、周りの人々の参考になる先例を作ることにもなります。私たちは、LGBTQ+の旅行者によりインクルーシブになる方法について共通の理解を築き、力を合わせることによって、大きなポジティブな変化を起こすことができるのです。
- LGBTQ+のゲストを同じようにおもてなしするには、当事者特有のニーズについてさらに学ぶ必要があるでしょう。弊社の「Travel Proud」トレーニングでは、これらの重要なポイントを学ぶことができます。
- チェックインからチェックアウトまで、ゲストがたどる一連の体験を振り返ることで、よりインクルーシブになれる改善エリアが見えてきます。
- 「インクルーシブなおもてなし」の取り組みを始めたら、周りへの発信もお忘れなく。「Proud Certified」の認証を取得し、信頼できる宿泊施設であることをLGBTQ+の旅行者にアピールしましょう。