
世界中の旅行者にとって、2020年は混乱に満ちた年でした。しかしペットの立場からすると、2020年はそう悪くはなかったかもしれません。外出や移動の制限によって飼い主と自宅で長時間過ごせるようになったことに加え、パンデミックにより車で行ける場所への旅行が主流となったことから、旅行にもついて行くことができるようになったためです。
Booking.comのプロダクトマネージャーであるTarundeep Singhは次のように語っています。「パンデミックの発生中、多くの人々がペットを連れて旅行しています。車で旅行することが増え、ペットと共に旅するのが容易となったためでしょう。」
健全な成長を遂げているペット市場
パンデミックが始まって以来ペットを飼う人が増加しており、この傾向は特に世界最大のペット市場であるアメリカで顕著に見られています。アメリカを拠点とする多くの動物保護施設からは、パンデミックの発生以降保護されたペットの里親になる人が急増しているとの報告があり、ペット用品の市場は成長を続けています。
アメリカペット製品協会によるペットの飼い主に関する最新の調査では、アメリカの家庭の67%はペットを飼っているということが明らかになりました。これらのペットの飼い主による消費額は毎年上昇を続けており、2020年の消費額は前年比3%増の990億米ドルに上ったと推定されています。
弊社プラットフォーム上でのペットの重要性
パンデミックによって大半の旅行が中止されましたが、ペットと旅行に関する印象深い事実の1つに、「ペット同伴可」の絞り込み条件が非常に多く使用されていることが挙げられます。この絞り込み条件の使用数は過去2年間で増加傾向にあり、Booking.comによる2020年の旅行トレンド予想の1つ、ペットに配慮した旅行への需要の高まりを反映していると言えるでしょう。移動制限の開始以来、この絞り込み条件の使用数は2倍以上に増えており、「『ペット同伴可』の絞り込み条件は、『施設・設備』欄で『プール』と『駐車場』に次いで3番目に多く使用されている条件です」とSinghは述べています。
ペットはこれまでも弊社プラットフォームにおける旅行の重要な要素でした。また、ペットに関する需要を満たすことでより幅広い層のユーザーへのアプローチに加え、閑散期における予約数減少の埋め合わせも図ることができ、パートナー施設様にとっても大きなメリットがあります。さらに、ペットの飼い主は一般的にペットを連れて旅行するためなら出費が増えることも惜しまない傾向にあるため、ペットの飼い主特有のニーズを満たすことでより高額な料金やペット料金を回収することが可能になります。
とはいえ、ペット同伴を許可する宿泊施設を運営する上での課題についても触れる必要があるでしょう。例えば、犬は滞在中にかなりの体毛を落とす場合があるため、特にカーペット敷きの宿泊施設様においては、動物ならではのこの問題に対処することが鍵となります。このニーズを満たすため、一部のパートナー施設様は特別な器具やペットの滞在後の清掃に関する専門知識を持つ清掃員の雇用に投資しています。
ペットを念頭に置いた特長のアピール
ここで、ペット連れのゲストを歓迎することにおいて長年の専門知識を持つ宿泊施設様の1つ、Staypineappleホテルチェーン様をご紹介しましょう。「私たちは、単に『犬に配慮しています』ではなく、『犬に夢中です』という表現を好んでいます」と語る、アメリカの7軒のホテルからなる同チェーンのCEO兼創業者であるMichelle Barnet氏。創業のきっかけは、同氏が2匹のシベリアン・ハスキーと共に旅行した際、毎回フロントデスクでホテルのスタッフの表情が曇るのを目の当たりにしていた体験にありました。「動物は人々を結びつける接着剤のような存在。彼らは家族であり、休暇先で歓迎されるべきなのです。」と同氏は確信を持って述べています。
通常のホテルと一線を画すStaypineappleの特長の1つは、そのペット料金のポリシーです。「私たちのゲストは常にリーズナブルなペット料金と、そのペット料金から得られる価値を求めています。」と説明するBarnet氏。得られる価値を明確にするための方法の1つとして、同チェーンではペット2匹を連れてきたゲストに対しても1匹分のペット料金を請求しています。パートナ施設様におかれましては、チェックイン時に期待値の相違が生じないよう、これらの詳細について明記するのが重要です。追加のペットごとに別途料金を請求する場合は、その旨を「事前に確認!」欄に含めるようにしましょう。
ペットの飼い主が望んでいることとは
ペット連れの旅行者は何を求めているのでしょうか。「ペットを連れていない旅行者がホテルや宿泊先を選ぶのと同じように、ペットの飼い主はペットが快適でいられる環境を求めているのです。」とBarnet氏は述べます。同氏曰く、ペットの飼い主は通常、近くの公園で犬の散歩ができるかどうかなど、同じエリア内でできるペット関連のアクティビティを探すことから宿探しを始めるのだそうです。その後の段階においては、ペットに配慮したアメニティが大きな差を生むと同氏は確信しています。「ペットの飼い主が価値を感じられるよう、部屋にはパイナップルをテーマにした犬用ベッドに加え、おやつの缶やフン用の袋も用意しています。」
また、Staypineappleではゲストに特別な価値を提供しています。なんと、ペットを客室に残して旅行先を観光することを勧めているのです。「弊施設では、客室にいるのは犬だけで、飼い主は街を観光している旨をスタッフに知らせるための独自のドア掛け表示を用意しています。これは私たち独自の取り組みだと思います。」とBarnet氏は語ります。
パンデミックを踏まえたマーケティング
無論、ゲストがこのように観光することは1年間で大きく減りました。「他のすべてのホテルと同様、私たちはパンデミックの影響を強く受けています。」と同氏は言います。 同社のホテルはすべて都会の中心部に位置しており、周辺にはコンベンションセンターや食事やショッピングに歩いて出かけることができるエリアがあります。「これらはすべて失われてしまいましたが、私たちはホテルの営業を継続してきました。」とBarnet氏は続けました。
ゲストがロードトリップを好むようになったことを考慮し、同社はこのニーズを満たすべくマーケティングの工夫に努めました。同氏は次のように語っています。「駐車場を提供しているホテルでは、駐車料金とペット料金を合わせたパッケージを提供しました。また、夏には車の窓から犬が顔を覗かせている動画や画像を使い、ロードトリップにまつわる大規模なキャンペーンを行いました。安全性と衛生面についてのメッセージを伝えつつ、楽しくて遊び心のあるブランドイメージを駆使してホテルの活気を保つことができました。」
*「ペット同伴可」の絞り込み条件を使用したユーザー数の割合を、2019年に同絞り込み条件を使用した平均ユーザー数と比較した数値に基づいています。
- Booking.comでの「ペット同伴可」の絞り込み条件の使用数は、移動制限の開始以来2倍以上になりました。
- パンデミックにより、保護されたペットの里親になる人が急増しています。アメリカペット製品協会によれば、2020年にはアメリカのペット市場が堅調に3%増加し、市場規模が990億ドルに達したと推定されています。
- ペット料金の透明性は犬に配慮したホテルチェーン、Staypineappleにとっての重要な差別化のポイントです。その一例として、同社は1匹分の料金で2匹のペットの滞在を許可しています。
- ペットの飼い主は、宿泊施設の近くでペットと楽しめる場所やペットに配慮した設備・アメニティ、そしてStaypineappleのようにペットを部屋に残して街を観光できる選択肢などのユニークなサービスがあるかどうかを強く意識しています。