
Booking.comの協力を受けてEY Parthenonが実施した新しい調査「Online Travel Agencies:Helping Europe’s small and independent accommodations succeed in the global marketplace(オンライン旅行会社:ヨーロッパの小規模の独立した宿泊施設の国際市場における成功を支援)」では、比較的小規模の宿泊施設様が支配的な立ち位置を占める、ヨーロッパの旅行市場の独特な状況に焦点が当てられています。本調査では、Booking.comのようなプラットフォームが提供する価値について調べることを目的とし、ヨーロッパにある2~250室の客室を提供する中小規模の独立した宿泊施設様600軒を対象とした直接のインタビューと調査回答を掘り下げています。
調査の結果から、全世界を対象としたマーケティングと客室の販売を実現し、海外からのゲストをめぐって宿泊施設チェーン各社と競合できるようになることから、これらの宿泊施設様にとってオンライン旅行プラットフォームは特に費用効果の高いマーケティングおよび販売チャネルの1つであることがわかりました。本記事では本調査を精査し、特に興味深い調査結果をいくつかご紹介します。
小規模でも存在感のある、ヨーロッパの中小規模の宿泊施設様
国連世界観光機関(UNWTO)によると、ヨーロッパは世界有数の観光地であり、すべての到着者の約50%を占めています。しかし、世界のほとんどの地域ではチェーンのホテルが市場を牽引している一方、ヨーロッパ全体のホテルの約87%(客室のキャパシティの63%に相当)は所有・運営が独立している中小規模の宿泊施設様であるという点で、この市場は他の地域とは性質を異にしています。
チェーンのホテルと比較した際、中小規模の宿泊施設様のシェアは2009年から約10%減少しましたが、これらの宿泊施設様はこの地域で依然として強い優位性を保っています。また、オンライン旅行プラットフォームを使用するゲストの80%は、通常宿泊施設様を訪れるゲスト層の市場以外からであることを踏まえると(本調査で判明)、これらの宿泊施設様が海外からのゲストへのアピールと稼働率の向上のためにBooking.comなどのプラットフォームに大きく頼っているのは理にかなっていると言えるでしょう。
オンライン旅行プラットフォームが持つマーケティング上のメリット
本調査では、独立系のホテル様にとってのオンライン旅行プラットフォームの主なメリットはそのマーケティング力にあると結論付けており、「プラットフォームを通じて提供する客室数や料金に関して宿泊施設は義務を負わず、成立した予約についてのみコミッションが請求されるため、OTAは柔軟性が高い上にリスクのないマーケティングチャネルを提供している。」と述べられています。
Booking.comをはじめとしたプラットフォームを使用することの価値について直接尋ねられた際、宿泊施設様の95%がマーケティング機能が主な理由だと回答しており、オンライン旅行プラットフォームを使用せずに施設運営を行う場合、マーケティングに多額の投資をする必要があるだろうと答えた施設様は81%に上りました。
売上アップの重要性
調査では売上の増加に関するデータを深堀りしており、Booking.comのようなプラットフォームに掲載すると予約数が伸びると考えている宿泊施設様は91%と非常に多い結果となっています。この高い比率から、ヨーロッパの宿泊施設様にとって最も重要な価値は恐らく売上の増加にあることが伺えます。
また、収益アップの実現について目を向けると、宿泊施設様のこの考え方は実際の成果に結びついている可能性があります。例えば調査では、オンライン旅行プラットフォームの予約による売上の増加は小規模な宿泊施設様の方が実際に高いことが示されており、「小規模な宿泊施設におけるOTAからの予約の増加レベルは、大規模な宿泊施設やチェーンの宿泊施設よりも大きい。弊社の調査ではこの数値は20%~30%の範囲となっており、これは様々な宿泊施設によって裏付けられている。」と記されています。
様々なサービスの価値
また、オンライン旅行プラットフォームは予約や支払いの処理に加え、カスタマーサポートを提供するためのインフラを宿泊施設様に提供しています。本調査ではこれらの付加価値のあるサービスに関する感想や意見についても触れており、オンライン旅行プラットフォームが提供する24時間年中無休の多言語カスタマーサービスはゲストにとってのメリットであると回答した宿泊施設様は、全体の78%を占めました。
支払いの処理に関しては、回答者の76%が、オンライン旅行プラットフォームの前払いと事前承認のオプションがキャンセルとノーショー(無断不泊)の低減に役立つと考えています。最終的に、ほとんどの回答者はこれらのサービスは実際に付加価値を提供していると考えているようで、62%がBooking.comなどのプラットフォームは運営コストの削減に役立っていると答えています。
また、大半の宿泊施設様は市場の動向と消費者行動に関する情報をオンライン旅行プラットフォームに求めることに明らかなメリットがあるとも考えており、オンライン旅行プラットフォームを利用することで、知見と分析結果を通じてパフォーマンスを確認・改善できると答えた施設様は83%に上りました。このような情報は多くの場合、需要を確認できるダッシュボードや、ユーザーのトレンドに関するアドバイスを含む季節ごとのガイドを通じて提供されています。
本調査では、収益向上の促進を目的としたデータに基づくアドバイスに従うことで、比較的小規模の宿泊施設様がBooking.comなどのプラットフォームの価値を見出すことが多い分野として、特に料金設定に言及されており、「特に比較的小規模な宿泊施設では、採用されている料金設定アプローチがあまり差別化されていない場合がよくある。これらの宿泊施設は、この点に継続的かつ積極的に注意を払うキャパシティとリソースが不足しているのだ。」と記述されています。
総括
まとめると、本調査で判明した肯定的な内容としては、宿泊施設様とオンライン旅行プラットフォームの間の重要なパートナーシップについて理解が深まっていることが示唆されており、回答者の85%は、オンラインプラットフォームは宿泊施設のリーチと多様な海外からのゲストへのアピールを高める上で、費用対効果の高い方法であると捉えています。
中小規模の宿泊施設様がどのようにOTAを駆使して世界規模のチェーンと競合しているかについては、EY Parthenon提供の調査レポートの全文をダウンロードして詳細をご確認ください(英語のみ)。
- チェーンのホテルは大半の地域で主導権を握っていますが、ヨーロッパはその限りではありません。ヨーロッパのホテルの87%は、中小規模で所有・運営が独立しているものとなっています。
- EY Parthenonの調査によると、ヨーロッパにある比較的規模の小さい宿泊施設は、大規模のチェーンよりもオンライン旅行プラットフォームでのリスティングからの予約数アップの効果が20%~30%高いことが分かりました。
- 調査では、オンラインプラットフォームはリーチと海外からのゲストへのアピールを強化する上で費用対効果が高い方法であると考える回答者は、85%を占めました。
- また、83%の回答者は、オンライン旅行プラットフォームを使うことで、知見と分析結果を通じてパフォーマンスの確認・改善を行えると回答しています。