
2019年以降、ホテル経営者にとって旅行業界はどのように変化してきたのでしょうか?今年マイアミで弊社が開催したClick.のイベントでは、CoStarのホスピタリティ・アナリティクス部門ナショナルディレクターであるJan D. Freitag氏より、非常に興味深いデータのトレンドが共有されました。同氏の講演は、数字から得られた知見をもとに、2023年の残りの期間と翌年以降の予測も提供する内容となっていました。
本記事では、ホテル業界の今後数年間の動向に関する同氏の予測についてご紹介します。セッション全体はこちらからご視聴ください。
パンデミックからの回復は、緩やかなものの着実
まず、喜ばしいことにレジャー旅行が全世界規模で本格的に復活しています。CoStarのアメリカに焦点を当てたデータでは、平日の旅行者数は2019年の水準にはまだ達していないものの、週末の平均客室単価(ADR)の伸びは堅調であることが分かっています。
一方、世界各地の主要市場では稼働率が健全な水準に達しています。そして、中国本土を除くあらゆる場所において、指数化した場合に2019年の数値に対して良好な料金の伸びが見られました。
また、CoStarのデータにより、アメリカのラグジュアリーホテルが好調であり(2019年からの販売可能客室あたりの売上(RevPAR)の変化率が6%)、リゾートホテルと小さな町のホテルは同期間で最高のRevPARの変化率(両方とも20%)を達成していることも明確に示されています。
「高需要日前後の日付」の人気がついに上昇
在宅勤務が非常に幅広く普及し、多くの人が「ホテルでのリモートワーク」のメリットをついに実感してきていることで、ホテルにとって収益性の高い「ブレジャー」(「ビジネス」と「レジャー」を組み合わせた旅行)市場が成長を続けています。旅行者が仕事と休暇を組み合わせ、早めに到着したり遅めに出発したりすることで、高需要日前後の日付(木曜と日曜など)の人気が大きく高まっているという顕著なトレンドが確認されているのです。ウォール・ストリート・ジャーナルで述べられているように、今後の出張は業務を果たしつつ、プライベートの時間も存分に満喫するというスタイルが流行すると予測されます。
数値としては良好なものの、他の要因の考慮も必要
Freitag氏は「ヨーロッパでは、現在の客室料金は2019年よりも22%高くなっています」 と述べており、北米でも同様に18%と堅実な上昇が見られています。週末旅行において、宿泊施設は大きな価格決定力を有しており、このデータがそれを実証していると言えるでしょう。しかしFreitag氏は、平日における企業の旅行者需要が好転しなければ、この伸びは鈍化する可能性があると警鐘を鳴らしています。
Freitag氏は、数値に関してより詳しい背景知識を共有し、インフレが収益にどのように影響を与える可能性が高いか、次のように説明しています。「言い換えれば、確かに客室料金は上昇しており、これは素晴らしいことではありますが、同時にインフレも発生しています。つまり、確認されているこの客室料金の伸びによる効果の大部分は、インフレによって相殺されているのです。」 CoStarのデータからは、2019年の実質的なRevPARの水準には、2024年まで戻らないことが本質的に示唆されています。
都市部のフルサービスのホテルは依然として不振
対面式の働き方への回帰にまつわる需要は、依然として大いに未知数です。企業の短期滞在への需要はどのように伸びるのか、という質問に対し、Freitag氏は「分かりません」と率直に回答しています。同氏は続けて、「私見では、これが今年、そしておそらく来年のホテル業界を決定づける質問になると思います。」と語っています。 人々が対面式の働き方に戻っていることと、市内の中心部で働いているこれらの人々を取引先が訪れていることとの間には明らかな関連性があり、これこそがホテルの需要を喚起しています。しかし、対面式の働き方に回帰するトレンドは、楽観視したとしても未だ不透明だと言わざるを得ません。
現在CoStarのデータからは、企業の短期滞在者の不足が都市部のフルサービスのホテルに特に大きな打撃を与えており、2019年と比較したRevPARの変化率はフルサービスのホテルで-4%、都市部では-7%であることが分かっています。空港ホテルも、2019年の数値と2022年の数値を比較した場合、アメリカでは-1%の変化が生じています。
団体旅行の需要は今後も堅調
フルサービスのホテルがハイブリッドの就業形態のしわ寄せを受けている一方、この文化的な変化は業界全体にプラスの影響も与えています。オフィスで同僚に会う機会が減ったことで、企業はチームでの旅行やカンファレンスを増やし、自社の文化を維持することに重点を置いています。企業は頻度の低い会合をより意義深い場にしたいと考えており、ホテルはこの恩恵を享受できると予想されます。団体旅行の成長は継続するのかという問いに対し、「きっとそうなります。」とFreitag氏は自信を持って答えました。
- 企業の短期滞在者の不足により、都市部に拠点を置くフルサービスのホテルは特に大きな打撃を受けています。
- 「ブレジャー」旅行の増加により、「高需要日前後の日付」の回復率は良好となっています。
- 多くの企業が企業文化を維持するためにチームビルディングの機会を重視しており、団体旅行の需要の成長は継続すると見られています。
- 客室料金の伸びによる効果の大部分が、インフレによって相殺されていることが確認されています。
- アメリカは景気後退の瀬戸際にあるにもかかわらず、Freitag氏は販売可能客室あたりの売上(RevPAR)は拡大すると予測しています。