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GoogleのTom van Gessel氏が紹介する、2023年の旅行者行動に関する重要な知見

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Click. 2023では、Googleでトラベルインダストリー・リードを務めるTom van Gessel氏が、旅行者行動に関して同社が実施した最新の研究の知見を共有しました。

旅行者が旅行体験の様々な要素にどのような優先順位を付けるのかという点から、本当にお金をかけることを厭わないものとは何かという点に至るまで、このGoogleマスタークラスには重要な知見が数多く含まれていました(セッション全体はこちらから視聴できます)。Gessel氏のClick.でのプレゼンテーションの後、弊社は同氏と旅行者の最新の検索トレンドについてさらに深く掘り下げ、パートナー施設様がそれらを活用する方法について探りました。 

まずはGoogleでのご自身の役割について、詳しくお話しいただけますか?

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Gessel氏:私はTom van Gesselです。Googleでの私の役割は、Click. 2023とHotel Insights with Googleで共有した旅行者行動の要因に関する新しい市場調査といった、旅行業界の助けとなるソリューションを考案、開発することです。さらに、一部の旅行パートナーと直接連携して、様々な部門やプロダクトの分野においてGoogleの利点を最大限に活用し、長期にわたる良い影響をパートナーに提供できるよう取り組んでいます。

ご自分の役割について一番好きなことは何ですか?

Gessel氏:私の職務は、パートナーや旅行業界の助けとなることです。約30年前にコーネル大学のホテルスクールでキャリアをスタートしたことと、利他主義の文化が根付いた台湾で育ったことが相まって、私は他の人々を助け、協力し、課題に対する創造的なソリューションを見つけることにやりがいを感じます。また、この役割では旅行業界での多様な経験を活かして、規模の大きい良い変化を推進する可能性のあるプロジェクトを考案し、後援することができます。 

ご自身がClick. 2023で行ったマスタークラスのセッションから学べる、最も重要な点は何ですか?

Gessel氏:マスタークラスで共有した「旅行者行動の真の要因」に関する市場調査の知見を踏まえると、複雑化、複合化の進む世界において、旅行者の実際の行動を駆り立てるうえで、どのような旅行体験の要素が真に重視され、価値が高いと感じられているのかを把握するのは困難です。私たちが発見したのは、旅行者の意見と行動の間には一定のギャップ、いわゆる「言行」のギャップが存在するものの、旅行者は最終的にはスムーズな旅行体験を求めており、旅行の購入において公正な価値の交換を期待しているという点です。Click. 2023のオーディエンスが戦略策定や貴重なリソースの優先順位付けを行ううえで、本調査の情報が有益となることを願っています。  

KANTARが実施した「The Expectations of the Evolving traveller 2022(2022年の進化する旅行者の期待)」。対象:2021年4月から2022年4月までに旅行したアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スペイン、イタリアの海外レジャー旅行者、18歳以上、サンプル数1万6,791名

貴社の調査から得られた、最も驚くべき旅行者行動を1つ挙げるとすると何でしょうか?そして、どのような点で驚かれましたか?

Gessel氏:この調査では、レジャー旅行者は、インスピレーションを刺激するコンテンツが自身の実際の予約行動に及ぼす影響を過小評価していることが判明しました。回答者はインスピレーションを刺激するコンテンツは自分には比較的重要ではないと答えており、35件の体験要素のうちの23位に位置づけました。その一方、行動分析においては、このようなコンテンツは35件の体験要素のうち7位に位置づけられており、自身が語っている以上に重要性が高いことが示されました。 

インスピレーションを刺激するコンテンツは、旅行者が購入に至るまでの行程の非常に早い段階で触れることが多いため、私個人としてもYouTubeやソーシャルメディアでオンラインで見た憧れの心を刺激する動画が、将来その目的地を訪れるという決断に対し、無意識的な影響をどの程度与えていたのか気づきませんでした。意識して振り返ってみると、私はエジプトの文化遺産やサンゴ礁に関する素晴らしい写真や動画をいくつか見たことがあり、それらが昨年ついに訪問を果たすという私のパートナーと私の決断に影響を与えていたに違いないことに気づきました。

サステナビリティは業界で注目のトピックですが、マスタークラスで説明されているように、消費者が望み、必要としているサステナブルな選択肢を提供することは困難です。ご自身が把握している中で、旅行業界において最も大きな成功を遂げたサステナビリティへの取り組みは何でしょうか?

Gessel氏:サステナビリティは業界にとって間違いなく重要なテーマであり、旅行者に正しい行動を促せるかどうかは私たち全員にかかっています。当社の調査から、レジャー旅行者は、サステナビリティの重要性に関して統一した見解を持ってはいないものの、選択肢が与えられ、中核的なニーズを犠牲にする必要がないのであれば、旅行者はサステナブルな選択肢を選ぶ傾向にあることが明らかになりました。したがって、業界として、私たちは情報を共有し、サステナビリティへの取り組みについて伝え、明確かつ具体的な活動やオファーによってサステナブルな選択を促す必要があります。これに関する実例をいくつか示しましょう。

  • Travalystの発足連盟の一員として、当社はBooking.comなどのオンライン旅行業界の他のリーダーと協力し、旅行情報をどこで検索しても、サステナビリティに関して一貫性のある正確な情報が表示されるように取り組んでいます。
  • また、希望に応じて、ユーザーが検索を通じてオンラインでこのような意思決定を行えるようサポートしています。昨年、フライトに関する新しい検索ツールの提供を開始し、検索結果内のすべてのフライトについて、炭素排出量の推定値が料金と所要時間と並んで表示されるようにしました。加えてGoogleは、検索を通じてホテルが「エコ認定」ラベルでサステナビリティへの取り組みを紹介できるよう支援しています。詳細については、次のブログ記事をご覧ください:「Building a sustainable future for travel(旅行のサステナブルな未来の構築に向けて)」、「Find flights with lower carbon emissions(炭素排出量がより少ないフライトを見つけるには)
  • Booking.comの「サステナブル・トラベル」プログラムもまた、独立した第三者機関のラベルプログラムを通じ、同社のホテルパートナーがサステナビリティへの取り組みを紹介できるようサポートすることで、旅行者によるサステナブルな旅行の選択を後押ししています。 
  • 一部の航空会社は、サステナブルな運賃や追加オプションを導入したり、ロイヤルティステータスのポイントやよりフレキシブルな運賃などの追加のメリットを顧客に提供したりしています。
  • 一部のホテルは、ロイヤルティ・ポイントや割引、慈善活動への寄付などの特典を提供することで、ハウスキーピングを断る配慮をゲストに促しています。

Googleが確認している最新の旅行者のトレンドについても、Click. 2023でいくつか紹介されていました。ご自身にとって特に興味深いトレンドは何ですか?

Gessel氏:当社の市場調査によると、レジャー旅行者は公正な価値の交換を求めています。旅行者の38%は、「一生に一度の旅行」を計画または予約する可能性がこれまでよりも高まったと回答しており、苦労して稼いだお金を有効活用したいと考えていることはさほど驚きではないでしょう。これが意味するものは、旅行者は掘り出し物や低料金のセールを見つけることに力を注いでいるということではなく、価値の高い旅行体験が旅行者の実際の行動に最も影響を与えているということです。事実、「コストパフォーマンスの良さ」はレジャー旅行者にとって2番目に重要な行動要因であり、35件の旅行体験の要素のうち2位に位置づけられています。こうした行動は、当社の検索トレンドや他社が実施した市場調査の至る所で見られ、さらには私が言葉を交わしたClick. 2023の出席者も、顧客に同様の行動が見られると述べていました。これらはすべて旅行業界にとって朗報であり、世界的なインフレとコスト上昇が発生している最中であっても、旅行者が料金と価値の適切な交換を行える限り、旅行は優先事項として存在し続けることが示されています。 

旅行業界がこのようなトレンドに備えるにはどうすれば良いでしょうか?

Gessel氏:旅行者がより多くの費用を支払うことを厭わないとは言え、根本的に重要なものは見出される価値です。つまり、コスト単体ではなく、顧客にとっての総合的な価値に重点を置くことで、より利を得られる可能性があります。これらのレジャー旅行者が「コストパフォーマンスの良さ」を求めていることは明らかになっており、旅行会社にとっては、提供するサービスに何が含まれているのかを顧客に明確に伝えることが不可欠です。インターネットによって旅行のコストと価値の比較がこれまでにないほど簡単になったため、旅行者は類似性が特に高い競合企業 / 施設を比較することで、公正な価値の交換を得られるか確信を得るようになっています。 

Googleマップのイマーシブビューのテクノロジーについて詳しく教えていただけますか?

Gessel氏:Googleマップは私が気に入っているGoogleツールの1つであり、有用で便利な新機能を試すのをいつも楽しみに感じています。それらの1つであるイマーシブビューは、Googleマップ内の場所を探索できる新機能です。私はこの機能を、レストランや観光スポット、ホテル、美術館などのあらゆるものを調べる際の「購入前のお試し」機能と呼んでいます。Googleマップのイマーシブビューを利用すると、旅行先や場所を訪れる前や、あるいは訪れた後であっても、まるで自分が現地にいるかのように感じられます。AIとコンピュータービジョンの最新技術を利用して、イマーシブビューは数十億を超えるストリートビューと航空写真を融合させ、様々な場所の豊かなデジタルモデルを作成します。さらに、本機能の非常に便利な点は、天気や交通状況、混雑状況など、他の情報も重ねて表示できることです。すでにロンドン、ロサンゼルス、ニューヨークなどのいくつかの都市で提供を開始しており、今後数ヶ月以内にアムステルダム、ヴェネツィア、ダブリンなども対象の都市に追加される予定です。非常に素晴らしい機能ですので、当社のブログ記事で実際に動作している様子をご覧になることをおすすめします。

旅行会社を選ぶ際、会社とのデジタルの接点を用いている旅行者は90%にのぼると仰っていました。旅行会社がこの情報を最大限に活用し、より多くの顧客を得るにはどうすれば良いでしょうか?

Gessel氏:この点は、オンラインの動画プラットフォームやソーシャルメディア、公式サイト、オンラインの旅行代理店や比較サイト、検索エンジンなど、すべてのオンラインプラットフォームが重要となることを意味しています。より実用的な面に着目すると、スムーズなショッピング体験の提供に向けて公式サイトを更新する機会をこれまで設けていなかった場合、今こそが注力するのに良い機会かもしれません。また、直接またはBooking.comなどの販売パートナーを通じてより多くの対象にアプローチできる、効果的なメディアや販売戦略を優先して活用しましょう。得てして、どこに予算と注意を集中させるかを決める際、このような点が優先リストから漏れてしまいがちです。しかし、当社の調査から浮き彫りになった点として、デジタルを優先課題に据えるべきであるという点は見落とせません。 

Click. 2023での体験で最も心に残ったことは何でしょうか?

Gessel氏:1つだけを選ぶのは難しいので、ここでは少し欲を張って上位の3つを共有します。1つ目は、旅行業界のイベントに実際に出席して、業界の仲間や同業者に温かく歓迎される体験を得られたことです。2つ目は、Booking.comのホストとイベント企画チームのプロ意識と思いやりです。今回が私にとって初めてのBooking.comのClick.イベントでしたが、その演出に心から感銘を受けました。残念ながら私はパーティーに参加できませんでしたが、とても印象的であっただろうと思います。そして最後に、新しい人々と出会い、言葉を交わしたことで学びを得たことのみならず、Click. 2023の講演者が提供する質の高いコンテンツからも学べたことです。 

Gessel氏はGoogleのトラベルインダストリー・リードで、EMEA地域のパートナーシップに焦点を置いています。同氏はその役割において、EMEA地域の旅行パートナーと旅行業界に長期的な価値を提供することを支援しています。Googleで10年以上にわたり、世界各地の様々な地域におけるパートナーに向けた多様な役割を果たしてきたGessel氏は、不動産と金融の分野でキャリアをスタートし、ニューヨークと上海でコンサルタンティングの業務に従事していました。その後、オンライン旅行業界に渡り、オーストラリアへ拠点を移してエクスペディアのアジア太平洋地域での事業の立ち上げ、拡大に取り組みました。Gessel氏はコーネル大学のホテル経営学部で理学士号を取得しています。

 

Tom van Gessel Google Masterclass
旅行者に関するさらなる知見について

Click. 2023で行われた、旅行者行動に関するGoogleマスタークラスの全内容を含めたこちらの動画(英語)をご覧ください。

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まとめ
  •  旅行者の意見と行動の間にはギャップがあり、これは「言行」のギャップと呼ばれます。

  • 選択肢が与えられ、中核的なニーズを犠牲にする必要がないのであれば、旅行者はサステナブルな選択肢を選ぶ傾向にあります。

  • ほとんどの旅行者にとって、価値はコストよりも重要視されるものです。