
情熱を持つことの必要性
実を言うと、私はホスピタリティ業界で仕事をすることになるとは一切思っていませんでした。5人の子供を持つシングルマザーとして生計を立てようとして、どちらかというと必要に迫られてゲストハウスを始めることになりました。そのため、2人の子供が大学に進学した時、彼らの空いた部屋を活用するのは良い方法のように思えました。
当初はこのアイデア自体について少しためらっていましたが、いつも私が心がけているように、全力で打ち込むことが最善のアプローチだと心に決めたのです。ホスピタリティの仕事に限らず、私の本業であるライフコーチとしての仕事や、人生全般においても、私は全てにおいてやるなら情熱を持ってやるべきだと思っています。私の人生のモットーは、「人の心を想って、熱意を込めて物事を行う」です。
見せかけの情熱は、誰からも気づかれてしまうものです。でも、心から親切に接すれば、それも皆が気づいてくれます。私の経験上、親切さは返ってくるものです。
ホスピタリティの仕事で本当に大切なのは、ゲスト一人一人のニーズや希望にできる限り気を配ることで、歓迎され、気にかけたり大切に扱われていると感じてもらって安心感を与えることです。
誰もがVIP待遇に値する
私は若い頃にたくさん旅行をしましたが、私の心に残る素晴らしい瞬間の多くは、宿泊施設のスタッフの方々が私のためにしてくださった、ささやかながらも一歩踏み込んだおもてなしでした。ウェルカムドリンク、フルーツボウル、チーズの盛り合わせ、一切れのケーキ(自家製だとさらに嬉しい)、小さな1箱のビスケットやチョコレート、花瓶に活けた切りたての花など、それほど費用はかからなかったかもしれませんが、とても意味のあるひと工夫でした。そのすべてが、手厚くもてなされて気にかけられているという気持ちになる大きな一因でした。
私が創り出そうとしている体験は、まさしくこのような体験なのです。決して、一生に一度の大きな経験である必要はありません。自分が気遣われ、歓迎されているとお客様に感じていただけるような、ほんのささやかな一瞬一瞬のおもてなしで良いのです。
例えば、お客様の誕生日や記念日には、ろうそくを立てた小さなケーキ(糖衣の文字で名前を入れることもよくあります)、楽しいカード、シャンパン1本を用意して差し上げます。
私はこれまでに、コートを忘れたお客様に自分の物を貸して差し上げたり、具合の良くないお客様のためにチキンヌードルスープを作って差し上げたり、周辺エリアについて良く知らず、 ご自身が気に入りそうなスポットのお勧めをご希望されていたお客様のために数えきれないほどのご提案を差し上げたことなどがあります。
もちろんこれらを行うには、お客様から感じ取れるヒントを頼りにすることが必要です。滞在中に人とあまり接触しないことを望んでいるお客様も時にいらっしゃいますが、これはまったくもって問題ではありません。そのような場合でも、朝に新聞をご用意したり、 特定の食事制限に合わせて朝食を作ったり、視覚を楽しませて明るい気分になっていただくために細部までとても気を配ったテーブルセッティングをすることなど、邪魔をせずにおもてなしする方法はたくさんあります。細部へのこだわりこそが重要なのです。
比較的小規模な宿泊施設の提供者の方にとって(大規模な宿泊施設の方にとってですら)朗報なのは、これらのおもてなしにかかる費用はどれもさほど高額ではないということです。しかし、利益を守ろうと必死になっていると全体像を見失い、私たち自身もお客様の立場となって考えることを忘れてしまうことがあります。
お客様を友人に
私は、ゲストハウスを始めてから、世界中の人々と友情を築いてきました。今でも彼らの多くと定期的に連絡を取り合っており、クリスマスカードを送ってくださる方はもっと沢山います。ご自身のサルディーニャにあるバケーションレンタルに、私を招待してくださった方もいました。
心に残る体験を提供することができれば、お客様は必ず覚えてくださっています。こう言うとシンプルに聞こえるでしょう。そして、実際、それはシンプルです。ただしこれは、私たち自身が絶えず自らに言い聞かせる必要があります。
- ゲストの体験を形作るのは、ウェルカムドリンクや歓迎の意を示す手短な会話など、ささやかながらも自身が気遣われ、歓迎されていると感じてもらえるようなおもてなしです。
- 暖かさと情熱のある態度で接することで、ゲストもそれに応えてくれます。
- 人とあまり接触しないことを望んでいるお客様でも、新聞をご用意することや、くつろげる暖炉の前でおいしいお茶と自家製アップルパイを楽しみながら読書ができる居心地の良いリビングルームを整えて差し上げることなど、彼らの好みを尊重した上でのおもてなしには喜んでいただける可能性があります。
- 利益は重要ですが、ゲストの体験には影響を及ぼさないようにしましょう。