The Mandrake Hotel Lobby

ホスピタリティにおける「ラグジュアリー」の主観性に働きかけるには

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ラグジュアリーの定義が人によって異なる中で、ゲストが期待する体験をすべてのゲストに提供するにはどうすれば良いのでしょうか?The MandrakeのレベニューディレクターであるDavid Zitzelsberger氏に、このバランスをどのように達成しているのかお話いただきました。

ラグジュアリーは主観的な概念

根本的な真実として、すべての人にピッタリな宿泊施設というものはありません。

私は非常に伝統的なホスピタリティ業界で経験を積んできましたが、The Mandrakeは私がこれまで勤務してきたどの場所とも異なっています。私たちは、すべての人のテイストに合うものを提供することはできないということを十分に理解しているのです。

だからこそ、自分たちをどう表現すべきかを慎重に考え抜いて発信しています。言葉遣いや、ソーシャルメディアにアップする画像などのあらゆる面において、自分たちの本当の姿をお見せしたいと考えています。そうすることで、お客様に当施設に滞在したいと思っていただけるようにしているのです。

たとえば最近の例では、世界的に有名なタトゥーアーティストのMark Mahoney氏をお迎えし、スタジオをご用意したうえで1週間ご滞在いただきました。これをラグジュアリーな体験だと思われない方もいらっしゃるかもしれませんが、タトゥーアート業界のトップアーティストからタトゥーをしてもらうことに興味をお持ちのお客様にたいへんご好評をいただきました。

私たちは、当施設をお選びいただくにあたり、ご到着されるよりも前に、お客様に適切な体験をご提供しています。たとえば、木曜から土曜にいらっしゃるお客様は、より「バイブス」を感じられる体験や、大盛況のパーティーにいるような雰囲気を望んでいらっしゃる傾向が強い一方で、日曜から水曜にいらっしゃるお客様は、よりゆったりとした、落ち着いた時間を過ごされる傾向があります。

このように人々をいざなうことで、当施設にいらっしゃるすべてのお客様が当施設でどのようなことを期待できるのか理解していただくことができます。やはり、お客様の期待と私たちのサービスとの間に根本的なミスマッチがあれば、どんなに質の高いサービスであってもお客様にご満足いただくことはできません。

適切なタイミングに適切なターゲット層を掴むことができて初めて、本当の仕事ができるのです。


ゲストひとりひとりに合わせた最高の体験を提供する

カスタマーエクスペリエンスの向上には、組織全体でのたゆまぬ努力が必要です。私は、役職名こそレベニューディレクターですが、第一に可能な限り最高のゲストエクスペリエンスを創出する立場のひとりであることが私の役割であると思っています。

そのため、私たちは「Catch Your Guests」というプログラムを社内で実施しています。これは、お客様と当施設との関係性にすべてのスタッフが直接貢献できるようにするためのプログラムです。

やり方は非常にシンプルで、お客様とやり取りをするたびに、より良い体験をご提供するために役立つと思ったことを書き留め、ゲストファイルに追加します。

これは、たとえば食事制限、朝のコーヒーや夜のドリンクの好みなど、滞在に関する直接的な情報であるかもしれません。 

しかし、このような情報と同じくらい、あるいはそれ以上に貴重なのは、ひとりの人としての情報です。そのような情報を書き留めておくことで、お客様が飼っていらっしゃる犬の様子について伺う際に名前で呼んだり、レコードが好きな方であれば、客室にレコードプレーヤーを用意したうえで気に入っていただけそうなレコードを準備したり、雨が降り始めたので、街を徒歩で散策するご予定だとおっしゃっていたお客様にタクシーを手配したりといったことが可能になります。

このような些細なことは期待されていないことかもしれませんが、それこそがとても強固な関係性を作り上げるのです。

真のラグジュアリーは心・体・魂にあると思います

ラグジュアリーな滞在のほとんどは心と体の声に応えるものですが、私たちはこれをさらに一歩進めて、魂の声に応えることを理念にしています。当施設の「スピリチュアル・ウェルビーイング・コンシェルジュ」サービスは、心と体と同様に、魂の健康も育むことを専門にした窓口となっております。

ヨガ教室をはじめ、様々なサービスを館内にてご提供しています。その他にも、クリスタルライン・サウンドバスからタロットカード占いまで、ご要望に応じて様々なコンサルタントをご紹介しています。

私たちはこのような取り組みをパンデミック前に始めており、当時は「あったら良い」程度と思われていたものの、人々が自身のニーズにより意識を向けるようになるにつれて、非常に多くの方からご好評をいただくようになりました。以前は、ほとんどのお客様が仕事の息抜きとして当施設に滞在されていましたが、現在では在宅勤務の息抜きとしてご利用される場合が多くなっています。それに伴い、メンタルウェルビーイングの意識が高まり、きちんと仕事から離れ、以前は考えもしなかったようなやり方で自分自身をケアするようになってきました。

これは、ホスピタリティ業界の成長分野になると思います。特に、ラグジュアリーな滞在が実際にどのようなものとなりうるか気づく方が増えるにつれて、その傾向は高まることでしょう。

 

Two people looking at a laptop
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まとめ
  • カスタマーエクスペリエンスの向上には、組織全体でのたゆまぬ努力が必要です。
  • すべての人にピッタリな体験や宿泊施設というものはありません。ゲストひとりひとりに合った体験を創出することが大切です。
  • ゲストが到着する前にゲストの期待を管理することは、ゲストが求める体験を確実に提供できるようにするうえで重要です。
  • そのような期待を上回る機会は何にも代えがたいものです。
  • パンデミック以降、スピリチュアル・ウェルビーイングへの需要が高まっており、David氏はこの傾向は今後も続くと予想しています。